制服&ユニフォーム ~安易に着てると大変な問題に~

   

 今はもう、デスクワーク(事務職)の制服のある事業所が、昭和の頃より減っていますね。また制服のある事業所も、とてもお洒落なデザインのものが多く、思わずそのまま外出をしたいような気分にもなります。昼休憩時にお弁当の買い出しまでなら、許可の出ている場合の方が多いでしょう。
 今日はそのような、労働者と制服やユニフォームと、社会全体との困った事例も出しながら、制服やユニフォームの取り扱いの良い方法を考えましょう。

 ご存知の方のほうが多いと思いますが、医師や看護師は、白衣のまま病院の敷地から出てはいけない決まりが、原則的にはあります。これは当然ですね。外出先からインフルエンザのウィルスを、白衣にくっつけて病院へ戻るわけにはゆきませんし、外出先で何かの出来事に遭遇した際に、
『ちょっとお医者さん助けて……』
などといった、業務ではないけれど、社会的立場の問われる微妙な場面の苦痛から、医師や看護師その他、薬剤師や療法士、放射線技師など、病院の職員を守るためでもありますから、衛生面と、自分と職場のプライバシーを、面倒ですが着替えの手間でもって守り抜きましょう。

 デスクワークの事務員さんの制服は、もっと決まりが緩和されてはいます。但し、朝の着替えのために、早めに出社して更衣室を使うのにも、思ったより時間がかかり、気遣いの多いことです。そこで、マイカー通勤の事務員さんは、自宅から制服で出社されている方々もいます。もちろん勤務先の承諾あってのことですが、朝はラッキーです。大変なのは、帰り道のお買い物です。
 制服のままでスーパーへ入り、すぐにレジが終わればまだしも、商品を選ぶ必要があったり、また別のフロアでレディース衣類を探すような際には、すんなりと駐車場へ戻ることのできない場合もありますでしょう。

 まず、制服を知った人も多いです。着ている人より多いものです。ですから、
『あの会社の事務員さん、どこのスーパーで半額の食品を買っていたわよ。給料が安いんじゃない??』
 などと、特に女性の噂話には『空想の世界』という増幅作用がついてきます。こんな噂は自分と勤務先との両方がターゲットにされているのです。
 車にカーディガンを一枚、いつも積んでおきましょう。羽織ってしまえば、なかなか勤務先の特定までは、他者の目線には困難なものです。守ろうアフター・ファイヴですね。

 さてレディース衣類のコーナーです。店員さんと間違われてしまったことはないでしょうか。きっと多いでしょうね。その場合には本当の店員さんが飛んできてくれますが、こちらのほうも、勤務先の高感度アップのために、決して迷惑そうな顔をしないで、
『わたしも制服のままでしたので……』
程度に会釈をしておきましょう。意外なところでの印象が、後日に業績にプラスになるものです。
 おっと、どの場合も名札は外では外しましょうね。勤務先のロゴマークや自分の名前のような、大事な個人情報を見に付けたまま、外で行動をしていると、人の口に戸は立てられずですよ。

 さて、現場作業や工場作業、配達員の方々が着用されるユニフォームのことも考えましょう。
 アパート内で唯一の単身女性のあきこさん(仮名)は、市民救命士でもありますので、日頃から朝はアパート周辺の掃除をし、ご高齢のお一人暮らしの方には声をかけ、若い人には『いってらっしゃ~~い』をする役目に……いつの間にかなって今もそうです。
 ひとりだけ、困った若い子がおりました。ちょいワルなのは見てすぐにわかりますし、別にかまわないのですが……素行が悪過ぎてみんなからの苦情が、あきこさんに相談されてきていました。あきこさんは、そのちょいワルの力也君(仮名)のバイト先を知っていました。だって、運送会社のユニフォームのまま、明け方からオートバイのエンジンをブンブンとふかしては、出勤してゆくのですから……。
 力也君はポイ捨て常習犯でもありました。アパートの敷地内でポイッ。どなたかの駐車場の上でもポイッ。花壇にまでポイッ。真夜中の外灯の下でホタル族……。
 これではアパート全体が、不潔で治安の悪い印象になって、ご近所さんから悪く思われて当然でしょう。でも、あきこさんが毎朝きれいに掃除をしては、花壇に季節毎の花を咲かせますから、子供が走って寄ってきたり、近隣の主婦の方々との立ち話になったりしながら、必死にコツコツとアパートの印象を明るく清潔に変えていったのでした。

 ポイ捨て常習犯には、これが気に入らなかったようで、あきこさんと力也君は揉めましたが、あきこさんのほうが経験豊富な社会人です。力也君に勝ち目などありませんでしたよ。5分も要りません。が、とうとう警察の力をかり、近隣の主婦の決断力に助けられ、アパート内の支援者の見守りもあり、力也君は住みづらくなってきました。
 このままではあきこさんだって怖いです。そこで、力也君の勤務する運送会社に連絡をして、従業員の素行不良に迷惑であることを告げました。するとなんと、集配センターのセンター長が、あきこさんの部屋までご挨拶に来られ、意外な事実が発覚し、またあきこさんが相談役になりました。
『退職願いも提出せず、ユニフォームも持ったまま、実質上は退職しているんです。でも手続きがなされていないので、ぼくが困っているんです……』
 あきこさんは提案しました。昨今は運送会社も書類の郵送業務を担っていますが、ここはもう郵便局の力をかり、配達証明もしくは内容証明の郵便の力でもって、提出を促すことでした。ユニフォームをもしも悪用された場合、運送会社の責任が社会全体から問われます。裁判にもなりかねません。また、持ったまま返さないでいるような、もと労働者の側が、会社から裁判を起こされても仕方のないことです。下手をすると、そのせいで、全国のスタッフの全員分のユニフォームのデザインを変える必要も出てきますし、その場合の相当な額面の一部を、もと労働者に請求されても、文句は言えません。そのような社則があるはずです。本人がきちんと読んで管理していなかっただけでしょう。

 あきこさんは、その運送会社の配達員の皆さんが好きでした。どんなに悪天候でも明るく、荷物を守り抜いて届けてくれて、しかもその間は場所の都合上、ハザードランプで一時停車したままのトラック……走って走ってがんばる、働く人の姿が美しかったのです。
 ところが力也君のせいで、その運送会社が心配になりもしました。さらに力也君はこっそりと月末でアパートから出てゆき、他の市へ転居するという情報を、上手く仕入れたのもあきこさんです。急がないとユニフォームごと姿をくらまします。

 コンプライアンスやセンシティヴのキワキワの綱渡りではありましたが、あきこさんはそのことを、それとなくセンター長のお耳に入れておきました。
 ユニフォームの回収と、退職処理を急いだほうがいいと……これは本人のサインと押印の要ることですしね。

 ユニフォームは決してプレゼントではありません。勤務先の看板です。ですから事業所によっては、クリーニング屋さんまでが回収にきてくれて、アイロンも糊付も終えたものが手元に帰ってくるのです。
 でも、ユニフォームは自宅で洗濯している方々も多いでしょう。干す場所や、着用したままでの行動範囲に、よくよく注意しましょう。

 逆のこともあります。
『あなた、あそこの職員さんだったの?? 探してたのよ近隣で……』
などと、顧客をゲットしてしまうような、うれしいこともありますが、これは事業所により多種多様な扱いがなされることです。上長(上司)や社長や店長に、このような新規顧客ゲットのことを、すぐに連絡しておきましょう。

 なんで制服やユニフォームに、こんなにうるさいんだろう……

 お若い方なら一度は感じたかも知れませんね。バイト時代にです。
 実は、名刺や名札よりもむしろ、着ている制服やユニフォームのほうが、世間の目は厳しくあなたや会社を見ていたのです。