雇用保険(失業保険)は随分あとからでも加入できます
就職や転職の困難な時期が長きに亘りますが、辞めたらほかに仕事がないからと、ひとりで悩んで耐えていませんか??
今は『ハローワーク』という名前で知られている以前の職業安定所へ、まずは相談されてはいかがでしょう。
求人雑誌から応募して採用になった事業所のアルバイトのことでも、労働の現状の問題ごとについては、まず相談に乗ってくれます。そして、労働基準法や採用時に契約した条件をもとに、解決策の提案を行ってくれます。この段階では解決の決め手にはなりませんし、職場にもばれないように個人情報を守ってくれます。もめ事にはなりませんので安心しましょう。
あきこさん(仮名)は、3年前の年明けに転職を決めて、実際にこれまでの給料よりも少し額面の高い事業所から、経理事務経験を買われて採用になりました。年度の切り変わりの月は、世間のおおかたの会社と同じように、期末が3月31日、期首が4月1日でしたので、忙しい時期に新しい職場へ転職したことになりますが、辞めたほうの事業所でも誰ひとり困らないようにと、引き継ぎを充分に行い、見やすい業務マニュアルも残して、あきこさんは円満に退職し、新天地へのお祝いまでいただき、がんばる気満々でした。
さて新天地の事業所では、帳簿が滅茶苦茶になっていました。前の人が急に辞めたことは知っていましたが、どうもお金の数字が合いません。雇い主の社長も、会社のお金で自分のお買い物を平気に行う人でしたから、あきこさんは経験を活かし、ひそかに記録と証拠をセットでパソコンに打ち込んでおきました。税務署に提出のできる帳簿と、公私混同のありのままの帳簿の二種類を、毎日まいにち同時に作って管理していました。こんな二種類の、ひそかな方の出番がないようにと祈りながらでした。
仕事仲間の個人情報の書かれた書類も、よく取り扱う状況でしたので、あきこさんは重大な問題に気づいて愕然としました。
『誰も雇用保険に加入されていないじゃないの……』
雇用保険は昔の失業保険です。やむを得ない理由で退職をしたときに、次の仕事を探す間の生活が少しでも安定し、早く再就職をきめるための活動を促す制度です。これは決してご褒美ではありませんので、『しばらく遊んで過ごそう……』を実行すると、雇用保険の保険金はもらえませんが、事業所の都合で解雇になったりした場合には、生活を救う資金になります。そんな大事な保険に、みんなが加入されていなかったのでした。
みんなには家族があり、お子さんもいましたので、一日の労働時間が平気で8時間をこえ、しかも週に6日間の出勤をしている人が、このままで満足しているはずがないと、あきこさんは、みんなの本音を少しずつ聞きだしました。案の定、正社員のサラリーマンなみのことは、最低限はしてほしいけれど、誰も社長に言えないままだったそうでした。
経理だけだはなく、事務的なことをぜんぶ担当していたあきこさんは、まずみんなを雇用保険のある労働者にすることに決めました。
あきこさんは前の職場でも、もっと前の職場でも、この手の手続きを行っていましたので、社長の説得にさえ成功したら、全員を採用年月日から雇用保険に加入する手続きなどは朝飯前でした。
ハローワーク(職業安定所)へ何度か行き来する用事に、自分の車を使いましたが、自分もふくめて最低限、雇用保険のある労働者にできたあきこさんは、
『まだまだなすべきことが、経理のほかにたくさんあるわね……』
と、官公庁訪問の日々を予感し、少し覚悟も決めました。
従業員を雇用保険にのみ加入させる場合は、事業主が負担する金額は大きなものではありません。社会保険完備にすると話は別ですが、失業対策だけならば、少ない負担で両方が少し安心できるではありませんか。
何ヵ月も働いているのに、まだ加入されていないような場合でも、採用年月日に遡って加入手続きができます。いや、そうしないと採用年月日の事実がくるってしまいます。
求人票に【雇用保険】の記載があったり、雑誌で略して【雇保】と印字されていたならば、加入してもらう権利が十二分にあるのです。
けれども、あきこさんのような事務員さんがいない職場の方も多いでしょう。
さいごに、そんな場合にでも、雇用主(社長)に訊き上手な質問の方法や言葉を考えましょう。
まずは採用初期の時期を想定します。
『家族も気にしているのですが……雇用保険の加入の時期は、試用期間の経過後でしょうか。それとももう少し先になりそうでしょうか……』
この『もう少し先』の部分が『訊き上手』な部分です。もしも『すぐに加入……』と訊いてしまうと、なんだか社長を急かしているようで、声をかけにくいですよね。
次に試用期間満了直前を想定します。
『試用期間の実績のご審査とともに、雇用保険の加入の目途がわかれば、家族も安心するのですが……』
ここでは二つの重大なことを『訊き上手』に行っています。ひとつ目は、試用期間満了後に正式に採用になりそうなのか、そして、その場合はきちんと雇用保険もついてくるのか……この二つです。
半年をこえてしまい、正直なところ、辞めて次を探したいような場合も想定します。まだばれないように配慮した訊き方を考えましょう。
『家の事情で出費があって、社会的身分の審査などと言われているのですが、正社員と言っても大丈夫かどうか、雇用・労災のふたつだけ、加入の確認をしてもらえませんか』
これは演技力がかなり要るかも知れませんが、相手の性分をよく考慮して、充分に言葉選びをしておき、辞めてしまった場合に備えましょう。